東京事変 - 『大人(アダルト)』

ファーストインプレッションを書きなぐってみるテスト。

TOKYO INCIDENTS製の「ADULT POUR HOMME」を開けるとほのかな甘い香り。まさに林檎のカホリじゃないかしら。歌詞カードの後ろに「Please scratch with your finger.」って書いてあってももったいなくて擦れません。きっとアダルトな香りがあふれ出すんでしょう。HOMMEとFEMMEで匂い違ったりするのかしら、とか気になってしまったら負けです。うっかりFEMMEも買ってしまいそうになります。

大人(アダルト) (初回限定盤)(DVD付)

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東京事変は以前の東京事変とは全くの別物になっています。アルバム聞き比べてみると衝撃的!

「秘密」1曲で新生東京事変のカタチが見える気がします。必要以上に意味を込めない歌詞と「気持ち良い」としか言えないサウンド。ロックという一言の枠に収まらないロックがここにはあります。伊澤一葉がキーマン。すごくやわらかくて優しいピアノを弾きます。
「喧嘩上等」での暴れん坊な声。心臓を打ち抜かれてしまいます。♪bullshit then?♪のクエスチョンマークでの嬌声にドキッ!この曲はマキ凛花っぽいかも。事変ファンの皆さん、一度マキ凛花も聴いてみちゃいなよ。
「化粧直し」でも伊澤一葉が良い仕事してます。BOSSAなやわらかい曲のラストはなぜか唐突にピコピコ音とトランペット。終わり方にどことなく「浴室」の雰囲気。
「スーパースター」は良い。すごく良い。どんなアレンジでも良い曲は良いです。
「修羅場 adult ver.」はアダルティーに生まれ変わってます。アルバムにすっかり溶け込んで我が物顔。大奥の映像(特に小池栄子の怖い顔のアップ)が頭をチラつくのをとめることはできませんが、それはそれとして。
「雪国」ではやわらかいピアノの音色が粉雪のように降り注いで。箸休め的な曲かしら、と思うと途中からその表情を一変させて情熱の雪国。
「歌舞伎」では亀田誠治ウッドベースが炸裂。刃田のドラムソロも気持ち良い。各楽器の音色が粒だって聞えます。メンバー紹介あたりに使われそうな予感。
「ブラックアウト」はなんとなくフジファブリックっぽい。とは言え、東京事変の方が遥かに大人である観は否めません。*1ライヴに備えて手拍子のタイミングをしっかり勉強しなきゃ。なんとなく「真夜中は純潔」を思い出したのは何故でしょう。エンディングの高音の鍵盤(ハープシーコード)は「リモートコントローラー」を思い出させます。
黄昏泣き」を聴いていて、東京事変はきっとメンバーまた変わるんだろうなぁ、とボンヤリ確信。こういう曲、ヒイズミ君では成り立たなかった(というより別物になってしまっていた)と思うのです。きっと椎名林檎と愉快な仲間たちは次の音楽を求めてまた変化していくんです。寂しいけど楽しみですね。いや、やっぱり寂しいですね。いやいや(以下略)。
「透明人間」の妙な楽しさ。これがこの曲の正しい姿なのかもしれないですね。以前のアレンジでは涙を誘う内に秘めた切なさが滲み出す曲だったのに、今では真っ直ぐな少年の瞳に映る空色の曲に。(歌い方もだいぶ違いますね。)この曲も手拍子を練習しなきゃ。
「手紙」の徐々に階段を上っていくような曲の展開、そしてその頂上での浮雲ギターが泣き叫ぶのを聴いて、あぁ、ここに椎名林檎はいる、と気持ち良く納得できるのは素敵。

前のツアーで東京事変の今後を代表する曲だと思われた「スーパースター」、「透明人間」はこのアルバムの中ではむしろちょっと異色な存在に見えるから不思議。この2曲だけ歌詞がすんなり頭に入ってきちゃうんですよね。メッセージ性が強い曲。ただ異色でありながら、溶け込み、アルバムを支えているんです。

全部聴いた後、ちょっと休憩してから感じたのは、東京事変というバンドを通して椎名林檎が自由で色鮮やかな大人になったんだな、ということ。素敵なことですが、それ自体が切なさを含んでいるのは、あの若い(というより幼い)頃の椎名林檎はもう見ることができない、という現実を目の当たりにしてしまったから。時の流れって美しくて残酷。

ツラツラと適当な感想を書きましたが、総括すると「たいへんよくできました」ですよ。ライヴの頃にはアルバムの感想もすっかり変わってしまっているかもしれません。味わい深いアルバムに万歳!

*1:この場合の「カン」って「観」で合ってます?「感」は違うような気がするのですが。誰か教えてくださいませ。